E・クライバー = NBC響のシューベルト3番

一貫して速いテンポで推し進めるが、要所要所での表現は千変万化。のっけから突っ走り、一度は落ち着いた様相を見せながら、再現部では打って変わったアッチェレランド、と順繰りに驚かされる一楽章。三楽章ではシューベルトの舞曲をちゃんと聴かせてくれるが、瞬く間に全曲が過ぎる。フルトヴェングラーの秘蔵録音と言われて聴かされればだまされてしまいそうなまでにフルトヴェングラーばり。このような演奏があふれ返っていた時代というものに少しばかり触れ、現代にフルトヴェングラーは決して現れないという事実をあらためて知る。